『親爺』 富山県富山市

一口に言って富山は美味い。

その理由は、まずなにより富山湾だ。

一説によると、日本で食べることのできる魚の種類は輸入も含めて1800種類と言われているが、富山湾ではなんと、そのうちの1500種類が穫れるというのだ。

これほど多種多様な魚が取れる海が間近にある土地の食べ物が美味しくないはずがない。

また江戸時代には、北海道から大阪を結ぶ海路を通る北前船の中継地として、様々な文化や食材、人が集まった。

例えば北海道の昆布などは、大いに料理の幅を広げた。

他にも、富山は海だけでなく黒部や立山など山深い地域もあり、山の幸も豊富だ。

このような自然の恵みが豊かで、様々な人と文化が集まった土地は食文化も豊かで当然と言える。

今回はそんな富山の豊かな食を味わえる居酒屋『親爺』を紹介する。

富山の恵みを味わう

JR富山駅南口に出るとバスターミナルとそこを行き交う路面電車・富山ライトレールのが目にに入る。

さらにその向こうにはホテルなどの商業ビルが並ぶ駅前の繁華街・新富町があり、『親爺』はその一角にある。

改修して店構えは以前より小綺麗になったが、そこで食せる料理の質は変わらない。

富山湾をはじめ、豊かな自然がもたらす良質な食材を使った料理の品数も豊富で、富山を存分に味わうことができる名居酒屋だ。

その上、料理の質に比べてお値段が良心的なのが嬉しい。

富山といえばホタルイカ

富山湾の春の味といえばホタルイカだ。

採れたてはその時期でしか味わえない。

お酒を飲む時は、お通しとともに1杯目のお供としても最適だろう。

ホタルイカの沖漬けもよいが、私は「本日の一品料理」にあったホタルイカの酢味噌をいただいた。

ワタの苦味と旨味に身の食感が合わさり、これが北陸の名物に名を連ねるのも納得の美味しさだ。

その土地のその季節の食べ物として、春の富山に来たら絶対に味わってほしい一品だ。

酢味噌以外にも日によっては天ぷらなどもメニューにあるのでお好みのものを食べていただきたい。

初芽ニンニクの天ぷら

春という季節で私がもっとも好きな食べ物は、山菜の天ぷらだ。

この季節の居酒屋では絶対に食べるようにしているが、お品書きに見慣れない料理が目に入った。

それが「初芽にんにく天ぷら」だった。

興味を惹かれたので、これを注文した。

お品書きには「初芽」とあるが、おそらく「発芽」のことで、つまり少し芽の伸びてきたニンニクのことだろう。

家庭でもニンニクを料理に使う際は、中に芽が育ってきていたらそれを取り除いて使うことからもわかるように、通常、ニンニクは芽が生えてきたものは価値がないとされる。

しかし、芽が生えてきたほうが栄養価も高く、味もニンニクそのものとは一味違い、ニンニクの独特の風味に加え、葉物野菜のような良い意味での青臭さもあり、天ぷらで食べてとても美味しかった。

よくある春の山菜の天ぷらとはまた違った楽しさがあるので、お品書きに見つけたら食べてみるのがいいだろう。

ただ思いのほかボリュームがあり、一人で食べきるのは少し大変だった。

富山の冬の味覚ブリ

富山でもっとも知られた海の幸と言えばブリだ。

特に冬に氷見で穫れるブリは質がよく「氷見寒ブリ」と呼ばれ、多くの人に知られる。

私が富山に行ったのは3月下旬だったので、その旬のど真ん中からはズレてしまっているが、富山の居酒屋でブリの名前を見たら食べるしかない。

この時はお刺身でいただいた。

旬の真っ盛りではなかったが、他の魚にはない濃厚な脂の旨味がお酒を進ませる。

これを食べて良かったと思った。

今度はもっと寒い時期のものを食べたい。

幻の魚・げんげの天ぷら

私は、豊かな海の幸を誇る富山に来たらぜひ食べたいと思っていた魚があった。

それは「げんげ」だ。

げんげとは、スズキ目ゲンゲ亜目ゲンゲ科の海面下300m~400mのところにいる深海魚で、昔は漁師しか食べなかった。

というのも、げんげは漁の網や他の魚を傷つけ見た目も悪いため捨てられるばかりで、市場にはあまり出回ることはなかった。

名前も「下の下の魚」ということで「げんげ」となった説もある。

しかしその美味しさは間違いなく、肉厚な身は白身魚のふわふわ感と深海魚特有の豊富なコラーゲンのトロトロ感が合わさり、アンコウを思わせる味と旨味がある。

今では、その美味しさから幻の魚とも言われ、「幻魚」と書いて「げんげ」と読むようだ。

私は天ぷらでいただいた。

これまでげんげを食べたことがなかった私は、これを食べて本当に感動した。

『親爺』でいただいたものはどれも美味しかったが、この時食べたものの中で1番美味しかったのはこのげんげの天ぷらだった。

食べる時つけるのはただの塩ではなく、カレー塩だった。

濃厚な白身のげんげの味にスパイスの香りが非常に合う。

そしてお酒との相性も抜群だった。

他にも、「げんげ汁」という汁物での食べ方もあり、出汁を味わうため、またはお酒のシメとしてはこちらのほうが良いかもしれない。

ブリやホタルイカもいいが、富山ではこのげんげも絶対に食べるべき食材だ。

富山の食材を富山の酒で楽しむ

私は地方の居酒屋に来たときは、できる限りその土地の地酒を飲むようにしている。

そんなわけで、この親爺で飲んだお酒も富山のものだ。

『三笑楽』(三笑楽酒造 富山県南砺市)『幻の滝 純米吟醸』(皇国晴酒造 富山県黒部市)だ。

『三笑楽』は富山県の五箇山にある酒蔵のお酒、いわば「山の酒」で、派手さはないがどっしりとしながらも優しさのあるお酒だ。

対して『幻の瀧』は黒部市の海に面したところに酒蔵があり、スッキリとしたお酒だ。

食べるものもそれぞれ、山と海に適しているだろう。

豊富な食材の料理に合ったお酒が飲めるのは嬉しい。

一度では味わい尽くせない富山の居酒屋

富山は食材が豊富な上に、この『親爺』その食材を使った料理も豊富だ。

お品書きを見ているだけで目移りするし、そして食べてみるとどれも本当に美味しい。

しかしげんげ汁昆布〆めも食べていないし、名物のおでんもこの時は食べなかった。

まだまだ味わいたいものがたくさんあると思いながら店を出た。

一度訪れただけではこのお店の味覚と魅力は味わい尽くすことはできなかった。

なので、再び富山を訪れたときには絶対にまた行こうと思う。

今度はブリの季節を狙って行くのもいいだろうかと考えている。

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