7月29日。18きっぷで大分県を回り、陽が傾きかけた頃、宿泊予約サイトで宿を探す。
津久見に安く泊まれる宿を見つけたので予約を取り、そこに宿泊した。
翌7月30日。今日はどこへ行こうかと、宿のお母さんに聞くと、「佐賀関はどう?今は鯵の季節でいいですよ」とのことなので、向かうことにした。
佐賀関は九州と四国の距離が1番近くなる小さな半島の先にある漁業の町だ。
そして、その半島の南側の根本にある町が佐志生である。
列車を降りたのは私だけだった。
小高い斜面の上にある駅舎は、小さいながらモダンな雰囲気があるが、周囲には民家が1、2軒あるだけで、人は見当たらなかった。
町に降り散策する。
町から山のほうを見上げると、山腹に小さな鳥居を見つけた。
近くにいた農家のおじさんに行き方を聞いて、その神社に向かう。
汗をかきなが階段を登る、この土地に来たことを報告しつつお参りし、登ってきた道を下る。
佐賀関までのバスは1日数本。そのバスの時間までまだ時間があるので、町の散策を続ける。
海もすぐそこなので見に行く。
海岸からすぐのところに、黒島という小さな島がある、景勝地でもあるようだ。
海沿いをぐるりと歩くと、また小さな神社があった。
時間と体力に余裕があるので、鳥居をくぐり階段を登っていく。
また町を歩く。商店跡や旅館がある。
予定のバスまではまだ時間はあったが、40℃近い猛暑の中をこれ以上歩く気もなくなったので、屋根付きのバス停へ逃げ込む。
バス停の横には飲食店があり、そこはまだ開店時間前だったが、横には自販機でがあったので水をかい、バス停へ逃げ込んだ。
ベンチでぼーっとしていると、お婆さんがやって来て私の隣に座った。
「旅行ですか?」
「はい。佐賀関へ行こうと」
「どちらから?」
「東京から来ました」
「まあ、東京?遠いところから……」
お婆さんはバスに乗るのではなく、スーパーなどの無いこの町にやってくる、生協の移動販売を待っているという。
内容なんて特に無いが、話は途切れなかった。
地元の方とこんな会話をするのも、一人旅の楽しいところだ。
楽しかったのは私だけではなかったようで、「話をしてくれてありがとう」と、お婆さんから缶コーヒーをご馳走していただいた。
「暑いから気をつけてね」
やって来た移動販売車へ向かうお婆さんの心遣いに感謝し、やって来たバスへ乗り込んだ。