大阪の中でも大きな街の1つである天王寺からJR阪和線で2駅の南田辺。
この駅は大阪環状線の外側で繁華街からは離れており、駅周辺は素朴な大阪の下町といった趣がある。
今回紹介する『スタンドアサヒ』は、その南田辺駅前にある大衆酒場だ。
お店の佇まいも町と同じように何の変哲もない普通の居酒屋に見える。
しかし、こんなレベルの高い酒場はそうそう無い。
気取らない極上の大衆酒場
スタンドアサヒには、私は2回訪れている。
1度目は旅行で大阪に行った際に評判を聞いて。
そして2度目は、スタンドアサヒに行きたいがために旅行の行く先を大阪にした。
スタンドアサヒは高級でもなければ、日本酒がそろっているわけでもない、気取ったところなどなにもない、ごく普通の居酒屋だ。
しかし雰囲気と、そしてなにより出てくる料理の質・安定感が抜群なのだ。
私は別に舌が肥えている人間だとは思わないが、いろいろなところで食べていると忘れられない味に出会うことがある。
新鮮な地場のものや、高級素材を使った手の込んだ料理に衝撃を受けるのはある意味当たり前のことだ。
しかしそうではない、煮物・焼き物といった普通の料理だが、口に入れるとまるで慣れ親しんだおふくろの味のように何の抵抗もなく舌に馴染みながらも、これまで感じたことがない美味しさに喜び震えることがある。
そして家に帰ると「あぁ、またあの店に行きたい」と思うようになる、そんな味だ。
スタンドアサヒは、まさにそんな料理が出てくる極上の酒場なのだ。
小鉢(炊き合わせ)
スタンドアサヒのメニューは豊富だが特に変わったところはなく、通常の居酒屋メニューだ。
だが、味がとにかく素晴らしい。
だからどれを食べても間違いないだろう。
なのでここでは、私が食べて印象に残ったものを紹介したい。
まずは「小鉢」だ。
ここでは「小鉢」と呼ばれるのは季節の食材の炊き合わせ(煮物)で、ほとんどのお客さんが最初に注文するメニューだ。
私が何を注文しようか迷っていたらお店の方にこれを勧められた。
1度目の時はタケノコやインゲン、画像は2度目のときで、かぼちゃや珍味・ハモの子が入っている。
味はバランスが良く優しい、ホッとするような味だ。
ハモと里芋
ハモを注文した。
これは季節だからということもあるし、関西に来たらそれらしいものは外せないと思ったからだ。
また、里芋の煮っころがしを注文した。
私は里芋が好きだからというのもあるが、炊き合わせを食べて、この店の煮物は絶対に美味しいと思ったからだ。
メニュー名は「こいも」で、関西圏では里芋を「こいも」と言うそうだ。
スタンドアサヒのメニューの価格は庶民的な下町価格で、このハモやうなぎの蒲焼などちょっと良いモノはその他のメニューに比べると少し高めという程度だ。
さて、そのハモと里芋の味も言うことはほとんどなく、とにかく素晴らしい。
ハモは小骨が多い魚で調理が難しいとされるが、しっかりと処理されている。
里芋は出汁がいいのだろうか、関西風の優しく上品ながらもしっかりとした味で、お酒と一緒に食べても負けることなく美味しく味わえる。
季節の味と優しい味に一口一口に喜びを感じる。
きずし
私は1度目に来た時は、これを食べ損なってしまった。
2度目は絶対にこれを食べようと思いやってきた。
それはきずしだ。
きずしとは、しめ鯖の関西あたりでの呼び名で、関西居酒屋の定番メニューの1つだ。
料理としての違いは、普通のしめ鯖が酢などで〆た鯖を、お刺身のように自分で醤油などをつけて食べるのに対し、きずしは提供された時すでに味ついていることだろうか。
画像をご覧頂ければわかるように、しめ鯖の入った小鉢の底にはすでに醤油のようなタレが入っているのがわかるだろう。
この味付けがお店によって違い、美味しさが決まってくるのだ。
スタンドアサヒではぜひこれを食べてほしい。
シメには赤だし
人によって様々だろうが、お酒を飲んだあとは温かくて味の濃いものが欲しくなる。
いわゆる「シメ」だ。
スタンドアサヒにはそんなシメに絶対オススメの一品がある。
それが赤だしだ。
赤だしとは味噌汁のことだ。
お酒を飲んだあとに味噌汁は本当に嬉しい。
しかもやはり出汁がいいのか、その何気ない一杯も極上なのだ。
お酒のあとだからと言うだけでなく、私の大好きな一品だ。
お酒は普通だがそれが良い
私が飲んだお酒はビールと日本酒だ。
どちらとも銘柄指定などはなく、ビールはアサヒ、日本酒は『白鶴』(白鶴酒造 兵庫県神戸市東灘区)だ。
ビールがアサヒなのは、スタンドアサヒを創業した先代が大日本麦酒(現アサヒビール)に勤めていたからであり、店名も底から来ているようだ。
スタンドアサヒは「日本各地の地酒をそろえました」というようなお店ではない。
しかしそれが良い。
アレコレと色気を出さない、素朴で気取らない、昔ながらの大衆酒場なのだ。
大阪の大衆酒場を楽しむ
私は東京に住んでおり、下町の居酒屋によく行く。
そんなお店では、料理の味はもちろんだが、雰囲気を楽しむのも良い。
大阪のスタンドアサヒは、料理の味付けも店員さんやお客さんの言葉も、私の知っている東京下町の居酒屋とは違う。
しかし温かく気取らない、そして陽気な雰囲気はどこか似ているとも感じた。
そして誰でも受け入れてくれるような懐の深さがある。
お店の方も常連さんも和気藹々と話していて、私も少しお話させていただいた。
旅先だったが、ホッとした気分で素晴らしい料理とお話を楽しむことができて、最高の思い出になった。
大都市・大阪に来たら都市部の高級店もよいだろう。
しかし、味も雰囲気も飾らない最高の大阪を楽しみたい方は、スタンドアサヒに行くのが良いだろう。
ただし注意点もある。
味よし雰囲気良しのお店なので、満席はいつものことだ。
絶対に入れるとは限らないので、予約するか早めに行くなどしたほうが良いだろう。
店舗情報 | |
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店名 | スタンドアサヒ |
ジャンル | 居酒屋 |
住所・地図 | 大阪府大阪市東住吉区山坂2丁目10−10 |
アクセス | 南田辺駅南口を出てすぐ |
営業時間 | 17:00~22:00 |
店休日 | 日曜・祝日 |
お問い合わせ | 06-6622-1168 |
ホームページ等 | スタンドアサヒ(食べログ) |