うつ病はつらい病気で、様々なことができなくなってしまいます。
健康の時ならなんてことはない「朝ベッドから起き上がる」「お風呂に入る」など、日常生活の中の当たり前の行動すらできなくなってしまうのです。
このようにうつ病は本当に大変な病気なのですが、そんなうつ病の方にも歯のケアだけでもなんとかがんばってほしいというお話です。
うつ病になった私の個人的な経験も交えてお伝えします。
うつ病の人も歯はがんばってケアしてほしい
私はうつ病により歯をずいぶん悪くしてしまった
私はうつ病になり、その治療のため6年以上の間薬を飲むことになりました。
今は薬が必要なくなって1年ちょっと経ちます。
薬を飲まなかったこの1年は、まだ気持ちが安定しない部分はあるものの、今後の人生のための土台作りのために、可能な限り少しでも色々な活動をしました。
その一環として、今年(2018年)のはじめから歯医者に通い始めましたが、思いのほか歯の状態が悪く、少し期間をあけて現在(2018年12月)もまだ治療を続けています。
そして、歯が悪くなっていた原因として、どうやらうつ病も関係ありそうだと歯科医さんに言われ、そのいくつかの要因がわかりました。
前提として、歯の状態に関してはうつ病以外の原因もあります。
例えば子どもの頃からの生活習慣やそもそもの体質ということもあり、個人差があります。
ですので、ここではうつ病を患っている方特有のリスクを、私が知ったものを挙げるので、うつ病で苦しんでいるご本人はもちろんですが、その家族など身近な方にも参考にしていただきたいと思います。
うつ病で歯が悪くなる理由
1. うつ病で動けない
うつ病になってしまった人の多くが経験する症状として「動けなくなる」というものがあります。
仕事や学校にいけなくなるだけでなく「朝ベッドから起き上がる」「お風呂に入る」などの日常生活すら困難になることも、うつ病では珍しくありません。
そして、うつ病になると「歯を磨くこと」もつらい作業になってしまうのです。
うつ病になって歯を磨く時間や回数が減ってしまうと、歯の状態が悪くなってしまう危険が高いのです。
2. 薬の副作用でドライマウスになりやすい
様々な考えがあると思いますが、現在のうつ病治療の基本は投薬、つまり薬を飲むことです。
しかしやはり薬には副作用があります。
そして、うつ病の薬における副作用で主に注意されているのは、日常で頭がボーッとしてしまことや希死念慮、つまり死にたいという思いが強くなってしまうことなどです。
うつ病の投薬治療においてこれらの副作用を危険視する理由もわかります。
しかしもちろん、これらも注意すべきことですが、今回ここで注意したい副作用は、唾液の分泌が少なくなり口腔内が乾きやすくなる「ドライマウス」です。
この「ドライマウス」副作用は、うつ病の薬の多くにありますが、希死念慮などの副作用が注目されることが多く、「ドライマウス」という副作用にまで気にしている方は少ないように思います
私自身もうつ病の治療開始当時は、精神状態の改善だけが気になりドライマウスの副作用にまでは気を配っていませんでした。
しかしドライマウスというのは口腔内の環境に、つまり歯にとって良くないことなのです。
本来なら口を乾きから守る唾液の役割について見ていきます。
唾液の役割1 殺菌
唾液は私たち人間の口の中で様々な役割をしていますが、その1つに殺菌があります。
口の中というのは、食べ物や空気など、外から様々なモノが入ってくる場所であり、体に悪いモノも入ってくる場所ですが、唾液はその悪いモノから僕たちの体を守ってくれているのです。
ですがうつ病の治療薬の中にはその副作用で、唾液の分泌を少なくしてしまうものがあり、唾液が少ないと口の中で様々な菌が増えてしまいます。
様々な菌やウイルスから体を守っている唾液が少なくなると風邪をひきやすくなることなどはもちろん歯にも良くなく、虫歯や歯周病にもなりやすくなってしまいます。
唾液の役割2 再石灰化
また、唾液が少ないというのは歯の再石灰化が促進されないということです。
歯の再石灰化とはなんでしょうか。
食事のとき、口の中は食べ物を消化するため酸性に傾きます。
すると歯の表面は少し溶けてしまい、これを脱灰といいます。
しかしそこで、唾液が口の中をアルカリ性に戻し、脱灰を食い止め、さらに唾液に含まれるカルシウムなどで歯を元通りにしてくれます。
これが再石灰化です。
しかし、唾液が少ないとこの再石灰化がうまく行われません。
また酸性の状態というのは、いわゆる虫歯菌が活動しやすい環境です。
なので、口の中を正常な状態に戻す役割の唾液が少ないというのは口内環境に対して良くないのです。
ドライマウスへの対処法
しかしやはり、うつ病の治療のためには薬を飲まなければならないので、ドライマウスになりやすいです。
なのでここではその対処法をいくつか紹介します。
まずは水分を多くとることです。
唾液の主な成分は水分なので、体の水分が多くなればその分唾液が分泌されやすくなります。
次に小まめにうがいすことです。
口の中を水や洗口液で洗い流せば、口の中の環境は保たれます。
最後に「舌回し体操」です。
詳しいやり方は調べていただきたいのですが、この舌回し体操をすると唾液の分泌が促されるので、口内環境の安定に有効です。
その他にも口内環境の維持に役立つことはありますので、うつ病の方にはなにかするのは大変かと思いますが、ご自分にあった方法をぜひ取り入れていただきたいと思います。
3.嘔吐
うつ病というと精神的な症状をイメージする方も多いですが、頭痛など身体的な症状として出てくることもよくあります。
そのうつ病による身体的な症状の1つが嘔吐です。
嘔吐に関しては、すべてのうつ病の方が持っている症状ではないかもしれませんが、私の場合は非常に顕著に出てきました。
有名な方では、タレント・俳優のユースケ・サンタマリアさんもうつ病からくる嘔吐に悩まされたそうです。
嘔吐は単純にそれ自体が不快で苦しいというだけでなく、歯にも非常に悪いものです。
食べ物などを溶かすほど強力な胃酸に歯がさらされることになり、それを繰り返せば、当然歯はダメージを受けます。
ですので、うつ病で嘔吐の症状がある方は、吐き気を抑える薬を処方してもらえるかお医者さんと相談してもいいでしょう。
それでも嘔吐してしまった場合はすぐにうがいをするなど、注意してほしいと思います。
また、女性は妊娠した際に、つわりで嘔吐してしまうこともあると思いますし、出産後も「産後うつ」になってしまった場合、歯のケアに注意してほしいと思っています。
まとめ うつ病の方とその家族は歯のケアにも気をつけてください
他にも様々な「うつ病と歯の関係」があるかもしれませんが、以上が私が経験し考えた注意してほしいことです。
歯はとても大切です。
特に最近では、歯は単に食べ物を噛むだけでなく、体の様々な部分や全身の健康に影響するものと考えられるようになってきています。
そして歯は1度失えば回復することはありません。
ですが日本は、欧米や韓国などと比べると、いまだに歯に対する意識が低いです。
私自身は歯の状態が今のように悪くなってしまい、ひどく後悔しています。
ですので、私はできるだけ多くの人に今からでも歯に対する意識を高く持ってもらいたいですし、それが可能になるような社会の制度や仕組みになっていってほしいと考えています。
そして、歯の健康は誰にとっても大切ですが、うつ病の方は、本当に大変でしょうが、後悔しないためにもがんばってケアしてもらいたいと思っています。
また、うつ病の方のご家族にも、気をつけていただきたいです。
多くの場合、うつ病のとき本人は、簡単なことでもできなくなってしまい、お風呂や歯を磨くことすら大変な労力が必要になり、それらが疎かになってしまいがちです。
そんな時、家族のフォローがあれば少しでも健康が維持できるようになります。
「歯を磨こう」の一言だけでもいいので声をかけいただけたらと思います。
そして、うつ病の本人も、歯を磨くと気分も少しスッキリするのではないでしょうか。