酒場・居酒屋には様々ある。
食べ物が美味しいお店。
お酒の種類が豊富なお店。
庶民的なお値段でワイワイ飲めるお店。
割烹料亭のような高級料理を楽しめるしっとり落ち着いたお店。
どんなお店もそれぞれの個性や特徴があって良いものだ。
中には、お店に入るのに少し勇気がいる居酒屋もある。
仙台の『源氏』はもしかしたらそんなお店の一つかもしれない。
しかし、仙台に行ったらぜひ一度は訪れてほしい素晴らしい居酒屋だ。
入るのに勇気がいる居酒屋に入る
居酒屋に限らず、高級店やいつも常連さんでいっぱいのお店というのは、慣れないと入りづらいものだ。
特に独自のルールやしきたりがあるお店は、よりハードルが高いだろう。
詳しくは後述するが、実は源氏もそんなルールがあるお店だ。
また、源氏は細い路地の奥に店を構えており、そんな隠れ家的な雰囲気も入りづらさを増幅させる。
だが、私が源氏に行った経験からすると、そんなに緊張しなくていいと思う。
恥ずかしながら、私はルールを知らずに行ってしまった。
それでも別に困ることはなかったし、始めは由緒ある酒場の雰囲気に飲まれそうになったものの、カウンター席に付けば次第に緊張はほぐれ、途中からは隣の席の男性とお話しながら楽しく飲ませていただいたのだ。
しかし「郷に入っては郷に従え」ということで、お客さんの一人としてそのお店のルールは守るべきだし、前もって知っておいたほうがベターだろう。
源氏は路地の奥にある
仙台駅西口からあおば通りを真っすぐ進み、中央通りを渡った左手側に、飲食店が立ち並ぶ一番町がある。
その飲み屋街の街灯の看板に店の名前が書かれている。
店の場所を示す矢印もない簡素なものだが、それが源氏の目印だ。
この看板の下の路地の奥の方に進んでいくと、店名の電光看板の下にお店の扉がひっそりと構えている。
初めて来る人には分かりづらいし、そもそも知っていなければこんなところにお店があるとは思わないだろう。
入口の前まで来ても、少なくとも歓迎されているようには思えず、尻込みしてしまうかもしれない。
しかし、ここまで来たら勇気を出し、扉を開けてみよう。
お店の中に入ると、その佇まいのように重厚な空気を感じるが、それと同時に、古き良き酒場然とした気取らない顔も伺えるだろう。
「一人4杯まで」というルール
他人の家やお店にお邪魔する時は、そこのルールやきまりに従うべきだ。
先程少し述べたように、源氏には他のお店と少し違うルールがある。
そのルールだが、まずは「一人4杯まで」というものだ。
お酒を飲める許容量は体質や体格など人それぞれだろうが、源氏ではそれが「4杯まで」ということだ。
酒飲みならばもっとたくさん飲める人はいるだろうし、色々なタイプや雰囲気の酒場があるが、源氏では「キレイに飲みましょう」ということで、その基準が「4杯」ということなのだと思う。
ただし、必ずしも守らなければならないな鉄の掟というわけでもないらしいので、「4杯まで」というのはおそらく「ここでは大量に飲み食いして騒ぐのではなく、落ち着いて上品にお酒をいただく」という、いわばお店のコンセプトだと思うので、それを理解し、お酒の量だけではなく、ふさわしい振る舞いを心がけよう。
「お酒+おつまみ」
しかし男性などは「4杯で足りるのか?」「もっとたくさん食べたい」という方もいるかも知れない。
しかしそこは心配しなくていいだろう。
源氏ではお酒を注文すると、1杯ごとに1品、その日の料理を一緒に出してくれるというシステムになっていて、量的にも十分だと思う。
つまり、「お酒+おつまみ」が1セットになっており、お酒を4杯飲めば4品の料理をいただけるのだ。
画像にあるように、お酒と一緒にけっこう大きな湯豆腐がでてくるので、料理が足りないということはないように思う。
値段についても、お品書きを見ると、お酒の値段が少し高めに思えるだろうが(例えばグラス1杯1,000円)、そこには料理も含まれているから安心してほしい。
そして他にも、食べ物に関しては自由に選べるメニューもあるので、お酒に合わせて好きなものを追加するのもよいだろう。
もしも、それでもまだ足りないというのであれば、二軒目にハシゴすればよい。
源氏のようなお店では、お酒と料理をキレイにいただき、長っ尻せずに店を出るのが粋というものだ。
めひかりの干物と常連さんとの会話
ここからはお店の紹介というより私の体験談だ。
それを通して、源氏の雰囲気が伝わればと思う。
私は3月の半ば頃に旅行で仙台に行き、源氏を訪れた。
扉を開ける前は緊張したが、中にはいると思いの外温かく迎え入れていただけたと思う。
少しかしこまりながら席につき、お酒や料理をいただいたことを覚えている。
扉を開ける時は「旅の恥はかき捨て」、お店に入ってからは「郷に入っては郷に従え」といった気持ちだったろうか。
写真などもあまり撮らなかった。
席についた私は、お店のシステムを伺い、お酒を頼んだ。
このとき、私は日本酒を2杯飲んだ。
料理は湯豆腐とマグロの刺身だったと記憶している。
お酒はこのぐらいにしようと思ったが、食べ物はなにか食べたかったので、めひかりの干物を注文した。
「めひかり」はアオメエソという深海に住む小魚で、その名の通り暗い海でも光る大きな目が特徴だ。
日本の多くの地域で食べられているが、宮城でも好まれている魚だ。
旬は千葉県以北では冬がメインで、私が源氏で飲んだ3月頃は旬の終わり頃だった。
私は「めひかりは確か今旬だったな」と思い頼んだが、どうやらそれがお隣にいた常連さんの目に留まったようで、声をかけられた。
その常連さんは、当時20代の私からすれば年配の男性で、おそらく相手からすると「若造が渋いものを頼む」といった印象を抱いたようだった。
するとそこから話が広がり、私が東京から旅行で仙台に来ていることを話すと、男性も嬉しそうに色々話をしてくれた。
その土地の旬の食べ物のことや、その男性も東京の私の住む地域のほど近くに住んでいたことがあること、私が翌日盛岡に行くつもりだと言うと、宮沢賢治ゆかりの喫茶店や、今はなき名居酒屋『とらや』に行くべきだといったことなど、様々なことを教えていただいた。(ちなみにこのブログのトップ画像は、その『とらや』のものだ)
旅先の居酒屋で少し緊張してながら飲んでいた私だが、そんな出会いから心地よく飲むことができた。
周りを見れば、他のお客さんたちも朗らかにお酒と料理を楽しんでいた。
いつの間にか気持ちもほぐれ良い気持ちで過ごし、店を出ることができた。
その常連の男性のおかげではあるが、源氏は決して堅苦しいお店ではなく、気軽に行けるお店だと感じた。
源氏へ行きたいという方は、当たり前の礼儀はわきまえつつも、そんなに肩に力を入れず行ってみるといいだろう。
こちらがしっかりマナーを守れば、きっと親切に温かく迎え入れてくれる、そんなお店だと思う。
庶民的だが落ち着いた古き良き名酒場
『源氏』は落ち着いた雰囲気の居酒屋で、騒がしい大衆酒場とは一線を画す。
威厳さえ感じるようなお店の佇まいや、古い歴史を感じる木の柱やカウンターに電灯の光が薄く落ちる店内も雰囲気も、ある種の迫力がある。
しかし、そこに集まる人々は穏やかながらも楽しげで、決して排他的なお店ではない。
値段にしても、むしろ庶民的なものだ。
要はかっこいい大人の酒場なのだ。
親しい人と話しながらワイワイ陽気に飲むのも良いが、落ち着いた空間で静かに飲み、サッと帰るのも粋な飲み方だ。
仙台の『源氏』は日本に残る、そんな古き良き大人の酒場といえる。
店舗情報 | |
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店名 | 源氏 |
ジャンル | 居酒屋 |
住所・地図 | 宮城県仙台市青葉区一番町2丁目4−8 |
アクセス | 青葉通一番町駅から徒歩3分 |
営業時間 | 16:30~22:00 |
店休日 | 日曜・祝日 |
お問い合わせ | 022-222-8485(予約不可) |
ホームページ等 | 源氏(食べログ) |