2019年5月17日に長野県松本市にある旧開智学校校舎が国宝に指定されました。
私は長野県、特に松本が好きで、3月に旅行に行ってきました。
今回はオススメ観光ルートの紹介も兼ねた旅行記です。
松本旅行記
東京から信州・松本へ
私が住む地域から最も近い、東京都内のあるJRの駅から各駅停車で新宿行き、9時00分発のあずさ9号に乗り西へ向かいます。
目指すは信州・松本です。
列車が高層ビルの足元をすり抜けるように走り出し、次第に街並みは遠ざかり、高尾を超えると車窓に山並みが迫りだし、都会を抜けたという気分になります。
列車は高尾以降は山の間を走りますが、勝沼ぶどう郷に至ると突如周囲が開け、眼下に甲府盆地を見下ろす絶景が広がります。
私は甲府から先に行くとなんとなく旅情を感じます。
甲府から小淵沢を通り過ぎると、右手に八ヶ岳を眺めながら進み、線路端の日の当たらない部分にはところどころ雪が残っていました。
高地にきたのだと感じます。
11時50分頃、定刻よりやや遅れて松本駅に到着しました。
ドアが開き、1歩駅のホームへ出ると、体に纏っていた都会の香りを残した車内のこもった空気を、涼やかで爽やかな風が洗い流してくれます。
この清い空気が松本にやってきたと思わせてくれます。
『三城』でそばを食べる
駅を出ると都内とは全く違い、街は高い山々に囲まれていますが、空はそれよりももっと高く広がり、開放的な雰囲気に包まれた街があります。
駅前のホテルのチェックインの時間まではまだ少しあるので、荷物を持ったまま松本の街を観光しました。
ちょうど昼頃なので、以前噂で聞き、また前回松本に来た時は定休日で入ることができなかった『三城』というそば屋に向かいました。
この三城はメニューはなく、2000円で蕎麦を含め何品かの料理がコース料理のように提供されます。
また、基本的にお酒も出てくるので覚えておきましょう。(車を運転するかどうかお店の女将さんが聴いてくれます)
メニューは決まっているのでお茶をいただいたあと、すぐに料理が出てきました。
出てきたものは順番に、日本酒、あみ茸の煮たもの、そば、そば湯、お新香、そしてデザートの花豆でした。
良い料亭を思わせる店の雰囲気と同様に、料理も一品々々丁寧に作られ上品です。
しかしただ上品なだけでなく、きのこにしてもそばにしても、良い意味で野性味があり、素材の香りや美味しさを味わえます。
かと言って「素朴な」とも違い、料理の味としてそれを感じました。
そして量もそこそこあり、それを考えると2000円という値段は安いです。
ですがこの三城は、グルメサイトなどでは賛否両論であります。
味の評価は概ね高いですが、良く言えば格式が高い、悪く言えば愛想が無いといった雰囲気で、排他的に感じる人も多いようです。
コースで出てくることからもわかるかと思いますが、「料理にこだわったお店」というふうに言えば伝わると思います。
また、店内では写真を撮ってはいけないと紹介されています。
そういったことから「背筋が伸びてしまうお店」ということで人を選ぶかもしれません。
日本の最高の神がそろったパワースポット・四柱神社でお参り
食事を済ますと、そば屋『三城』から松本城とは逆方向ですが、すぐ近くにある四柱(よはしら)神社にお参りしました。
その名の通り、この神社には四柱の神様が御祭神として祀られています。
この四柱神社は何がすごいかと言うと、日本の神様の中でも最高に位置づけられる神様が祀られていることです。
その神様は
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天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
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高皇産霊神(たかみむすびのかみ)
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神皇産霊神(かみむすびのかみ)
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天照大神(あまてらすおおみかみ)
の四柱です。
「日本の最高の神様」というと、『天照大御神』と思う方も多いと思いますが、『天之御中主神』『高皇産霊神』『神皇産霊神』が「造化三神」という「最初に出現した神」なのです。
四柱神社は、そんな三柱の神様に加え天照大御神を祀ったなんとも豪盛な神社で、近年はパワースポットとしても注目を集めているようです。
国宝・松本城へ
今回の旅行の1番の目的は松本城です。
以前来た時は、入るまでに1時間以上待たなければならないという状況だったので諦めたのですが、今回はすぐに入ることができました。
私は何度も松本を訪れて、美しいお城だと松本城ですが、中にはいったのは今回が初めてです。
特徴的な黒い色は、松本城の基礎を固めた城主である石川氏の秀吉への忠誠を示すため大阪城に倣ったからということらしいですが、決して重苦しさは感じさせず、信州の青く広い空と、澄んだ空気の中に美しく映えます。
またその佇まいも、日本の城らしく重厚さはあるが無駄に威を示すのではなく、山に囲まれた街に静黙と、しかし悠々と聳えています。
夏の緑にも、冬の雪にも映えるお城で、桜の季節には夜桜会も行われ、夜の闇の中でも美しいです。
城内もその他の多くのお城と同じで、外敵から城と街を守るため周囲を把握できるよう、辺り一帯を見下ろすようにできていたり、銃眼がいくつもあります。
しかしその一方で、ここでの生活が戦ばかりではなかったを示すように「月見櫓」という庭の方へせり出した櫓があります。
外から見ると堅牢な壁に囲まれた城の中で、ここだけは木の戸板で覆われており、使用する際にはその戸板も外すことができ、遮るものがなくなようになっています。
その名前の通りここでは月を愛でたのでしょうし、信州の爽やかな風を感じながら歌や音楽が奏でられたのでしょう。
今でも夜桜会などのイベントの時はここで楽器の演奏をしています。
この櫓が、荘厳な城に風雅を添えています。
もうひとつの国宝、旧開智学校へ。
ここまで観光して、ホテルのチェックインの時間まではまだ少しあったので、まだどこかをぶらぶらしようと思いました。
松本城の裏側にあり、歩いて5~10分ほどの最近国宝に指定された旧開智学校校舎に行きました。
ちなみにこの旧開智学校は松本城からも見え、古い特徴的な建物ながら町なかに溶け込んだ姿が素敵です。
見ての通り和洋混交の古き良き建築であり、以前から重要文化財に指定されていましたが、2019年5月17日についに国宝に指定されました。
中は木造の校舎の教室に古い木製の椅子や机、黒板などがあり、当時のここで学んでいた子どもたちの姿が偲ばれます。
不思議なもので、人間、初めて訪れた、初めて見た場所なのに、懐かしさや郷愁を感じる場所というのがありますが、この旧開智学校が正にそうです。
校舎の中を歩いていると、昔ここで学んでいた子ども達一緒に、小さな頃に自分が廊下を走り、階段を駆け下りている姿が脳裏に浮かんできます。
ここでは明治に建てられた貴重な建築を見学することもできるし、展示された資料で「学都」と呼ばれる松本の教育の歴史を学ぶこともできる。シンプルにレトロな雰囲気を楽しんでも良いでしょう。
また、校舎の隣には旧司祭館があります。
ここは明治にフランスからきたオーギュスタン・クレマン神父が住んでいた洋館を移築したもので、以後100年近く松本カトリック教会の宣教師たちの住居として使用されていたそうです。
この建物は完全な洋館であり、和の趣もある校舎とはまた違った雰囲気を味わうことができます。
何にせよこの旧開智学校では、時が止まったような建築の中で、心地よい時間が過ごせます。
…
バーの街・夜の松本
最後は少し雰囲気を変えて、個人的な夜の松本の記録です。
あちこち観光していると、ホテルのチェックイン可能な時間になっていました。
松本には、他にも松本市美術館や時計博物館、深志神社や縄手通りなど、観光スポットがあるのでそちらもオススメです。
また、有名なスポットでなくとも松本には古い建物のお店などもあり、空気を感じながら歩いているだけで楽しい街です。
ただ今回私は1泊して次の日に別のところへ行く予定もあったので、ホテルにチェックインして少し休憩しました。
そして、せっかくその街に宿をとるのであれば、夜の街を楽しもうと思っていました。
夜の街と言っても怪しい話ではなく、食事やお酒を楽しむということです。
私は、その土地の食べ物と酒を味わうことが大好きなのです。
そして松本は知る人ぞ知る『バーの街』です。
私は予約した駅前のホテルに行きチェックインを済ませ荷物を置くと、襟付きの洋服に着替え、ドレスコードはなくとも、オーセンティックバーに行くならと、フォーマルとは言えないまでも身だしなみを整えてました。
はじめはバーではなく、食事が取れる店に行きました。
そこは特に有名なお店ではなかったが、出てくるものはウドやタラの芽、フキノトウなどその土地で採るれたもので、旅の気分と共に非常に美味しくいただきました。
地方都市に行くとチェーン店ですら、その地場の採れたてのものが出てくるので嬉しいです。
天ぷらや和え物、そして信州名物の山賊焼きや蜂の子にも手を出し、十分に腹を満たした私はその店を出て、あるバーへ向かいました。
そのバーは以前にも行ったことがあり、初めて訪れた時に飲んだウイスキーの香りが忘れられず、今回が3回めの訪問でした。
バーには東京でも何度も行ったことがあるが、シックな雰囲気のお店の扉の前に立つと、いつもなんとも言えない高揚感と緊張感が湧き上がってきます。
勇気を出して少し重さのある木の扉を開けると、そこには薄暗く大人の雰囲気が満ちています。
そんな重いとも言える雰囲気とは裏腹に、バーテンダーは落ち着いた、しかし親しみのある声で快く迎え入れてくれました。
私は証明の柔らかい光が落ちる一枚板のバーカウンターに席を取るとジントニックを注文しました。
ここのジントニックは弾けるような香りで、ものすごく美味しいのです。
カクテルをゆっくりと飲みながら、私が東京からの旅行者で、何度かこの街にもお店にもきていると言うと、喜んでいろいろな話をしてくれました。
そして、目的のウイスキーがあるかと聞くと、当時とは違うものだが同じ蒸留所の物があるというのでいただきました。
詰められていた樽から移った木の香りと独特の甘い香りが混じった琥珀色の液体を舐めるように口に含むと、華やかな香りが口に広がります。
以前と味は違うが、それでもこの質のものが飲めるという悦びは、何にも代えがたいものでした。
お酒にまつわる話などを伺いながら、ゆったりと時間は過ぎていった。
酒の味と店の雰囲気の心地よさに名残惜しさを感じながらも、店をあとにしホテルへ戻り、酔いと楽しさでふわふわとした気持ちの中で眠りにつきました。
ここでは行った店名は記しません。
旅先の夜の街は、自分の足の赴くままに歩いてほしいからです。
松本には魅力的なお店がたくさんあるのでご自身で「ここだ」と思えるお店をぜひ見つけてください。